クワス

 ロシアの伝統的清涼飲料クワスに関して、私は間違いばかりしている。店で売っているクワスはソフトドリンクであって酒ではないが、もともとクワスとはロシアのライ麦パンを醗酵させて作る炭酸飲料なので、製法によっては成分中にアルコールが残る。今回モスクワへ来たばかりのとき、大衆的なロシア料理店ヨルキーパルキーで、FLASHの山崎編集者、スパイストーカー野田氏と3人で夕食を食べた。ここで注文したクワスは、その辺のビールと変わらないぐらいのアルコール分があったらしく、何年も酒を飲んでいない私は真っ赤になってしまった。コーランによると、知らずに口にしたものは罪にならないそうだが、イスラム教徒なのに酔っ払っているのはみっともない。
 さて、今日の夜遅く、ワシーリーの家に帰る前に、私は24時間営業のガストロノームへ行って、食材を買い込んだ。大好きなクワスももちろん買った。ここのはペットボトル入りの工業製品だから、もちろんアルコールは入っていない。しかし、ワシーリーの家で一口飲んで、私は吹き出しそうになった。クワスとは甘いものだと思い込んでいた。じゃあ、これは腐っているのか?この強烈な匂いは、いったい?ラベルを確認して愕然とした。「カブ汁入り」と書いてあった。クワスには甘いものだけでなく、カブ汁味もあったのだ。泣きそうになりながら、もったいないのでそれでも飲んだ。