普通、復旧

 インターネットがせっかく繋がったと思ったら、午後になって、ワシーリーの家の電話が繋がらなくなった。これだ!電話料金の不払いが原因かもしれないし、電話機が壊れたのかもしれない。こういうときに、ワシーリーは、「まあ、しばらく待ってみよう」と悠長だ。ここから電話が繋がらなくなったのなら、ガリーナの家にでも泊まって、そこから電話を使っても構わないのだけど。
 午後5時過ぎ、まるで何事もなかったかのように、電話が復旧した。ワシーリーは言う。
FSBが盗聴のための工事をしたのかもしれない。これまでは音声通話だけだったが、昨日からインターネットを使い始めた。それが分かったから、一旦回線を切っておいて、インターネット回線に侵入するための工事をやったのかも」
「そんなことがありうるかなあ」
「今は分からないが、ソ連時代はまったく頻繁にやられていたことだ。プーチンFSBにとてつもない予算をつけているから、またそうなってもおかしくない」
 それから、ワシーリーは言った。
「ここは不幸せな国だ」