若者は海外に出た方がよい

専修大学武田徹先生のゼミに呼んでいただいて、学生たちとお話しする機会をいただいた。大学に呼ばれて講義する機会はたまにあるのだが、今日は講義のあとでお茶をいただきながら雑談していて、はっとしたことがあった。

みなさん、海外旅行をしたことがないし、海外に行こうと考えてみたこともないというのだ。数年前、コロナ禍以前であれば、学生たちは全体に貧しくなったり、海外旅行ブームが去ったとはいえ、ささやかな形でも、卒業前に海外に貧乏旅行を体験することぐらいは特別なことではなかったと思う。

福沢諭吉は25歳の時から三度の海外渡航を体験し、それによって視野を広げることに成功しているし、坂本龍馬もそうだ。新島襄にいたっては密出国で渡米している。

ぼく自身が学生だった1990年代は、高度経済成長が終わり、バブル経済の果てに日本が零落へ向かう直前の情勢だった。そんなタイミングであっても、海外を観ることの意義は大きかったと思う。

今は、本来、当時とは比べものにならぬくらいに、海外の実相を、観て、体験して、知っておくことが大事な時代ではないかと思う。なにしろ、日本は30年間まるで発展できておらず、その間、欧米も、アジアも、世界のほとんどの地域も大成長を遂げたのだ。私たちは取り残されてしまった。日本よりも海外の方が進んでいるときこそ、福沢や坂本や新島がそうしたように、進んだ世界の姿を目に焼き付けて、自分たちの現在位置と進むべき方角を確認する意味は大きい。

それがどうやら、コロナ対応のための鎖国体制と、その後の空前の円安や、経済の低迷によって、若者たちにとっては海外旅行とはよその世界の物語のように聞こえるようなのだ。

気の毒すぎる。そして私たち全体にとって大変な不利益だ。なんとかならないものか。