ネクタイは野蛮人の象徴?

国境なき医師団チェチェン戦争に関するリポートを出した。(↓)
http://www.japan.msf.org/special/chechnya01.html

チェチェンニュース事務局も新たな記事をネットに公開した。(↓)
http://www.geocities.com/kafkasclub/che/01news/chn_038.html

いつもそうだが、一つの戦争が大きく報道されると、
その間に他の地域では報道の扱いが相対的に小さくなることに
つけ込んだ動きが出てくる。
パレスチナ紛争の激化に伴って、ロシア軍はチェチェンでの「対テロ戦」を
外部に騒がれることなく展開している。
ロシア政府は今回、イスラエルに対してパレスチナからの軍撤退を求め、
あたかも平和を希求しているかのようだ。
その裏で、イスラエルよりもむしろ本格的な無差別市民殺戮を実行している。

ハチントンは「文明の衝突」の中で、
西欧文明とイスラム文明は必然的に衝突してゆくと唱えた。
これを批判する欧米の論者の多くは、文明の摩擦ではなく、
「貧困こそがテロの温床」であり、ことの本質は南北問題であると反論している。
日本を含む左翼系市民団体の多くもこれに同調している。
どちらも的はずれだ。
南北問題に論点を帰する考えは、「職がないからテロに走る」とか、
「教育がないから過激に流れる」といった、
ことの原因を小国・少数民族側にだけ押しつける発想に他ならず、
大国・富裕国の責任は彼らを支援し、
積極的に関わり続けてゆくことであるかのようだ。
事実はそうではない。
大国に逆らい続けている集団は、
チェチェンにしても、ウイグル自治区にしても、
膨大な資源を持っており、本来的に貧しい地域ではない。
彼らは干渉という名の支援など求めてはいない。
彼らの土地から出ていって、一切関わらないでいて欲しいだけだ。
今、世界の至る所で続いている戦争の本質は、
宗教や文明出自を問わず、
あるいは資本主義か社会主義かといった経済体系の出自を問わず、
強大な軍事力を持った国家が利害上の都合で、
立場の弱い集団を利用し、蹂躙しているだけだ。
ことの本質を表すキーワードは「文明の衝突」でも「南北問題」でもなく、
文明以前の未開にして野蛮な「弱肉強食」である。