0に非ず

もったいないの一言だ。
今日発売されたCIRCUS11月号(KKベストセラーズ)のことだ。

アフメド・ザカエフ
ザラ・イマエワ
マイルベク・タラモフ
袴田茂樹

など、そうそうたる大物へのインタヴューを成功させておきながら、
取材者のスキルが足りないが故に、誰に何を聞くべきかを
完全に誤っている。
袴田茂樹という人物は「イスラム原理主義」に詳しい人か?
ザラ・イマエワは「おばあちゃんが心臓発作を起こした」と
語るために登場すべき人か?
袴田氏は「イスラム原理主義」ではなく、「ロシア」の大家だ。
ザラは誰よりも、「チェチェン民族とはなにものか」を語れる人物だ。
マイルベクはチェチェン戦争の背後でどんな動きがあるかを
分析し続けている人物だ。
そのあたりをすべて取り違えているがために、結局この記事の結論は
原理主義が恐いよ」というだけの幼稚な内容に終わってしまった。
ぜんたい、バサエフと「原理主義」とやらに、どんな関係がある?
バサエフはこれまで一度だって、「原理主義者」だったのか?
そもそも、「原理主義」ってなんだ?
記事に説明されていることは一行残らず間違っていた。
当然だ。
袴田教授はそんなこと、知らないのだから。

この記事で私は、取材者の山口花能氏にチェチェン独立派の
アフメド・ザカエフを紹介するという協力をしている。
チェチェン独立派指導部から直接取材するパイプは、日本のメディアでは
限られているのに、チャンスが生かされなかったのは残念だ。
山口氏は先だっても、BURSTという雑誌にチェチェン難民取材報告を
載せていたが、難民しか取材していないというのに、
チェチェン独立派はテロ集団か?」というタイトルをつけていて、
こちらをあんぐりさせてくれた。
チェチェン独立派を一切取材せず、見たこともないのに、
テロリストかそうでないかが分かるのか?
だとしたら、山口氏には透視能力でもあるのか?
そういう、エスパー系、あるいはデンパ系、ひょっとすると
お花畑系記者は、実はうようよいる。
それでも、そういう人たちから今後も誰かからチェチェンに関する
取材協力を頼まれた場合、私は断るつもりはない。
イラクパレスチナと違って、チェチェンは絶望的な
ジャーナリスト不足の現状にある。
取材者・報告者がいないがために、ロシア軍と諜報機関の蛮行に
ストップをかける者がない。
たとえどれほど稚拙で無能な取材者であっても、一人もいないよりは
マシなのだ。