現代と論座

今日発売の月刊「現代」11月号(講談社)P242〜249に
プーチンファシズム―ロシアは再びKBGに支配された」と題した
私の記事が掲載されています。
(参照→ http://kodansha.cplaza.ne.jp/mgendai/
同じ号のP212〜219にはノヴァヤ・ガゼータ紙アンナ・ポリトコフスカヤ
記者へのチェチェン北オセチア学校占拠事件に関する壮絶な告白も掲載。
お薦めです。

同じく今日発売の「論座」11月号(朝日新聞社)P140〜145
チェチェンとは何か―カフカスは『ロシアの火薬庫』」にも、
(参照→ http://www3.asahi.com/opendoors/zasshi/ronza/
私は筆者・伊藤千尋さんへの情報提供の形で協力しています。
が、こちらはお薦めできる内容にはなっていません。

個々の情報は正確なのですが、ぜんたいの文脈としては、チェチェン戦争や
北オセチア学校占拠事件に関して、カフカス地域そのものが
「バルカンの火薬庫」さながら、歴史的に民族集団同士の
相互憎悪の土壌であり、その中から起きたことであると結論付けています。
これは明確な間違いです。

バルカンと違って、カフカスの諸民族はロシア、オスマン、ペルシアと
いった大国からの侵略に晒され続け、それらから共同して防衛してきた
運命共同体でした。
このため宗教・言語・民族がかけ離れているにも拘らず、
文化的に共有するものが多かった歴史があります。
民族間憎悪は歴史的なものではなく、91年のソ連崩壊をきっかけに、
それまでまったくなかったものが一昼夜にして創り出されたのです。

論座」はオピニオン誌ですから、個々の情報そのものよりも、
それをどう解釈するかが重要になる雑誌だと考えます。
そして、この記事の「誤ったカフカス観」は、チェチェン戦争や
学校占拠事件の本質を大きく見誤らせることになりかねません。
つまり、ソ連とロシアの少数派支配のあり方に問題があるのではなく、
少数派同士が勝手に憎しみ合い、殺し合ってでもいるかのように、
誤解させかねないのです。
この記事だけ読むと、あたかもロシアには何の責任もなく、
被害者であるかのようです。

私は情報提供の際、文書でこの意見も添えて送ったのですが、
伊藤さんは無視されました。

この号ではP132〜の徳永晴美教授もチェチェンに関して書いていますが、
この記事の方が、ことイスラムに関する情報に細かな間違いはあるものの、
ぜんたいとしては真実に近いといわざるを得ません。