越境司令

グルジア・カヘティ地方・アフメタ地区・パンキシ渓谷・ドゥイシ村。
チェチェン人の友人宅に滞在して、1ヶ月半が経過した。

家の前の丸太ん棒に腰掛けて、近所の兵士と話していたら、
我がウスターズ・ムハンマドが闇の中を歩いて帰ってきた。
シャドー・ボクシングを繰り返したりと、妙に機嫌がいい。
ぼんやりと虚空を眺めていた私に空気のボディ・ブローを入れて、
景気をつけてから、彼はいった。
「今月中にチェチェンへ行く。
今日、バサエフとハタブの指令が届いた。
モスクワやイングーシへ行く時間は、多分もうない。
お前を連れて行ってやる」

近くにバサエフとハタブの代理人が住んでいて、
そこに指令が届いたそうだ。
初めてのことだ。

大部隊がカフカスを越える。
私は神に祈るしかない。