いるはずだった場所(その2)

 でも今は、カフカスのジハードについての原稿を書いているところ
 アルハムドゥリッラ、すでに何本も書いたんだよ。
 ハワジはシャヒードになんかなっていないよ。
 彼は山の中で両足にケガをしてトビリシへ戻ったよ。
 今は獄中にいるよ。
 インシャーアッラー、秋の終わりには日本へ帰ってくると思うよ。
 おれたちのジハードは順調にいってるんじゃないかな。
 心配ないよ、アルハムドリッラ!
 電話は持ってるの?
 そっちに電話するから、番号教えてくれよ。
 じゃあな、アッサラーム アレイコム!」
アフメドは数十分後に返事をよこした。
アッサラーム アレイコム!
 返事読んだよ。
 できるなら、写真も送ってくれないか。
 おれたちが写ってるやつを全部さ。
 そっちはどうやら元気そうだな。
 電話持ってないんだよ。
 金がありゃぁ、こっちから電話するんだが、なくてさ。
 シャミル、おれも負傷したんだよ。
 良くなったら、ジハードに復帰するよ、インシャーアッラー・・・
 じゃあな。
 アッサラーム アレイコム!」
アフメドはハワジと同じ部隊で、チェチェンで戦っていたということらしい。
そして、同様に負傷して、戦線を離脱したのだろう。
戦線離脱してしまうと、部隊全体の状況は分からなくなるから、
ハワジが戦闘のあとどうなったのか、知らなかったのだろう。

19日頃から、私はパンキシのイスラム聖戦士の友人たちに、
片っ端から電話してみた。
一人も捕まらなかった。
一人の友人の電話には、本人でなく、チェチェンプレスのスタッフが出た。
アスラン(仮名)なら帰ったよ」
「帰ったというのは?」
「家へ帰ったんだ」
それで、私は理解した。
チェチェンへ向かったのだ。
チェチェンプレスのスタッフは、必要な情報は送るから、
メールで問い合わせるように、といって電話を切った。
イスラム聖戦士を引退して、トビリシに住んでいる友人一人だけが捕まった。
「みんな、2ヶ月前に行ってしまったよ。
 トビリシにいた戦士たちももういない。
 パンキシにいた連中で、戦士たちは全部、山へ向かったし、
 バックアップしていた有力者たちは
 トルコやアゼルバイジャンへ出国したよ。
 すっかり淋しくなってたから、お前の電話で救われたよ」
彼もアフメドもハワジも私も、結局自分の部隊に
置いてけぼりを食らってしまったのだった。