今年のザイーフたん

一年ぶりに、ザイーフ師と話をすることができた。去年も師は舌鋒鋭く米国
を批判していたが、それでも「この戦争は交渉によってしか終わらせられな
い。交渉当事者になり得るのはオマル師だけだ」と、和平交渉の必要性を
語っていた。
しかし、今年の師は米国どころかカルザイとの和平すら「不可能だ」と、全
面否定した。

ザイーフ師は、「占領がすべての問題の根源だ。政治腐敗も占領下の傀
儡政権だからこそ起きた。タリバン政権下ではなかったのだ。麻薬の問題
もそうだ。占領下で麻薬ビジネスが復活したのだ。国家再建・復興支援の
名の下に、多くの国や団体がアフガニスタンを訪れているが、占領という現
実を追認・正当化し、延命させるような支援を私たちは認めない」と、語った


占領という言葉を戦争と言い換えると、ぼくが考えていることとほぼ同じだ。
日本のメディアも支援団体も、戦争の是非を問わぬままで、アフガニスタン
の教育問題や女性の権利の問題、地域の復興について語っているものが
目立つ。

しかし、今のお為ごかしの「対テロ戦争」が続く限り、どんな人道支援も復興
支援もエクスキューズにしかならない。バカバカしいマッチポンプだ。
ザイーフ師はタリバンが責任の一端を負っていると認めたくないから、「占
領」を強調するのだろうが、米軍が占領する前からアフガニスタンはずっと
戦争だった。タリバンはそれを終わらせることができなかった。現在の諸問
題の責任が米国の占領にあることは間違いないが、占領が終わりさえす
ればすべてが解決するというのは彼らの悪質な嘘だ。

米軍が一方的に撤退すれば、今度はアフガン人同士、ムスリム同士の内
戦が再開されるだけだろう。それを避けて、30年続いたこの国の戦争を終
わらせるには、米国、タリバンを含めたアフガニスタンのすべての紛争当事
者の和解が必要だ。

しかし、米国にはその意志がなく、むしろ秘密裏の和平工作を妨害してい
る。タリバンも去年と違って、和解への熱意を失っている。オバマは「18ヶ
月以内に撤退開始」を公約したが、状況は明らかに、著しく悪化している。