リトビネンコ事件講演会

リトビネンコが遺した「ロシア闇の戦争」↓を翻訳した中澤孝之氏の
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E9%97%87%E3%81%AE%E6%88%A6%E4%BA%89%E2%80%95%E3%83%97%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%B3%E3%81%A8%E7%A7%98%E5%AF%86%E8%AD%A6%E5%AF%9F%E3%81%AE%E6%81%90%E3%82%8B%E3%81%B9%E3%81%8D%E3%83%86%E3%83%AD%E5%B7%A5%E4%BD%9C%E3%82%92%E6%9A%B4%E3%81%8F-%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%88%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%8D%E3%83%B3%E3%82%B3/dp/4334961983
講演会に行ってきた。
話を聞いた後で、印象に残ったのは、そもそも、リトビネンコが破天荒な人生
を送ることになったきっかけとなった96年の「暴露記者会見」をなぜ強行した
のか、という会場からの質問に、中澤さんがはっきりした答えを示せなかった
ことだった。
それまでのリトビネンコの背景や利害関係を考えても、彼はあの記者会見を
開く積極的な理由を持っていないし、事後的にもなんの利益も得ていない
どころか、生涯命を狙われ、遂に殺害されてしまった。やはり、あれは
リトビネンコの単なる正義感、「殺すなかれ」という、彼の内なる良心による
ものとしか、説明できない。
ぼくにとってはリトビネンコは友だちで、「彼はそういうやつだ」で説明が
終わってしまうのだけど、ぼくなんかより客観的に、私情を交えず
リトビネンコを見ることのできる中澤さんにもそうだということが、ぼくには
むしろ意外だった。
KGB/FSBスパイの正義感というものがどういうものか、ぼくははじめ、よく
分からなかった。正義漢なら、なぜ、泣く子も黙るソ連圧政の象徴たるKGB
就職したのか?
実際のところ、KGB/FSBという組織はとにかく巨大なもので、誰もが
暗殺だの謀略だのの職務に就いているわけではない。ソ連時代には成績の
いい生徒は半ば自動的に共産党やKBGに進路を決められてしまっていた。
どうやら、リトビネンコは自分が暗殺命令を受けるまで、民主化したと
いわれた90年代のKGB/FSBにも闇の世界が広がっていることを知らなかった
ようなのだ。
リトビネンコがFSBの犯罪の事実の多くを知ったのは、実はFSBから離れて
英国へ渡ってかららしい。FSB/KGBで極秘情報に関与して亡命した人間は
数多くいるが、顔も名前も出しておおっぴらに活動したものはない。
唯一の例外たるリトビネンコは、むしろ亡命後に世界中からKGB/FSB
闇に関する情報が集まるセンターと化したのだった。