プリ・プラズニク(その2)

 イングーシ側の国境からナズラニまでは300ルーブリ払った。少し高いことは分かっている。しかし、その分、宿探しに付き合ってもらおう。ホテル・アッサはナズラニ一の高級ホテルで、一泊550ルーブリから600ルーブリ。高級ホテルとしては安いが、私には高い。タクシストは次に、バザールそばのアフトセルヴィスの二階にある小さなホテルに連れて行ってくれた。モテルのようなものだろう。一泊350ルーブリ。共同だが、お湯のシャワーがある。ここに決めた。
 チェック・インしたあと、難民キャンプへ行こうかとも思ったが、まずはナズラニを見たい。考えてみると、私は99年にも2000年にもイングーシを訪れているが、ナズラニやスレプツォーフスクの街をゆっくり見たことがない。来るたびに、秘密警察に見つかるのを恐れて、私はずっと隠れていた。それに、今難民キャンプへいって、そのまま泊まることになったら、またシャワーを浴びれないままになってしまう。
 デジカメ一つ持って、バザールを散歩した。私にはチェチェン人とイングーシ人の顔立ちの違いは見分けられない。イングーシ人も、チェチェンからの難民もいるだろう。私の目には、単に懐かしい顔がうじゃうじゃいるだけだ。グルーシャ(西洋梨)を一キロほど買う。70ルーブリと高い。明日のバイラムの準備だろう。巨大なトールト(ケーキ)が売られている。小さいのがあれば、私も一つ買おうと思っていたが、こんなに大きいのでは食べられない。
 宿に戻ると、若者が写真を撮ってくれという。彼は宿の客らしく、恋人の若い娘と眼も当てられないほどいちゃいちゃしていた。彼と恋人がベッドで抱き合っているところを撮影した。イスラム教徒のイングーシ人の中には、こんな若者の風潮を嫌うものもあるだろう。こちらが外国人だからこんなに大っぴらにベタベタしているのだろうし、撮影を頼んできたのだと思う。それにしてもここは一種のラブホテルなのか?(その3へ)