雨の倫敦(その1)

午後3時半頃にはロンドンは雨模様だった。
午後4時よりも少し早く、シャミルはキングズクロスで待っていた。
地下鉄の※※ラインで※※まで。
そこから更にバスに乗って、高台の住宅地へ。
そこにリトビネンコ邸はあった。
ザカエフ邸も近くらしい。
リトビネンコはラフなスタイルで現れた。

ザカエフは、プーチンの治世が続く限り、
チェチェン戦争は終わらないだろうという見通しを示した。

リトビネンコの妻マリーナに地下鉄駅まで※※製の車で送ってもらった。
キングズクロスに着いたのは午後9時頃。
サイバーカフェに入って、※※氏や※※氏にメールを書く。
午後10時過ぎにディンウィディハウスに戻る。

ヌハエフは聡明で、チェチェンの中のチェチェンとでもいうべき男だが、
彼が祖国分割論を唱える限り、チェチェン市民の支持を得ることはできず、
いきおい国民の代表たりえないだろう。
ザカエフはチェチェンで誰よりも国際社会の理解と支持を勝ち得た男だが、
ヌハエフと対称的に、彼の感覚は既にチェチェンの素朴な辺境の民の
メンタリティから遊離している気がする。
彼の中には伝統的な生き方を守りたいというチェチェンの民の思いや、
信仰生活を守りたいというムスリムの思いが欠けているか、
あるいは持っていながら隠している。
もっともそういうザカエフの欠損は、彼の上官たるマスハドフには
備わっていると考えて良さそうだ。
だからこそ彼は、軍事的にはほぼ無力であるにもかかわらず、
チェチェンから一歩も出ずに踏みとどまっている。