キルクーク

 キルクーククルドの二つの街、スレイマニヤとアルビルの中間に位置する大都市だが、通貨はバグダッドと同じサダム札が使われている。バグダッドよりもここではディナールの対ドルレートが高く、1USD=1500ディナールで取引されているそうだ。しかし、物価の安いバグダッドよりさらに、ここの物価は安いようだ。3週間前まで、ここはサダムに支配されていた。バグダッド陥落後、サダムの軍隊は戦わずにキルクークを明け渡し、米軍とクルドゲリラが入城した。戦闘こそなかったものの、略奪は激しかったらしい。主な政府の建物には火災の跡が残り、繁華街にはシャッターを降ろしたままの店が目立っている。
 戦争前の今年3月始め、バグダッド中心部のバグダッドホテルに泊まっていたジャミーラ団の日本人「人間の盾」志願者の面々は、突然、イラク当局から「全員、キルクークの石油関連施設に連れてゆく」と宣言された。
 キルクークの石油関連施設とは、イラク市民の生命や生活というよりも、サダム政権の利権により関係の深い場所だ。それに、これはもともとクルド人の居住地で、サダムがクルド人を追放して権益を独占した場所に他ならない。キルクーク油田で「人間の盾」になるということは、米軍の侵略からイラク市民の生活を守る盾というよりも、クルド人からサダムの利益を守る盾にされてしまうということだ。(その2へ)