光臨する人、しない人

奥山さんによると、文芸春秋は評判の美人記者を
イラクへ送り込もうとしており、今夜アンマン入りするという。
未明にアリ・イスマイルさんと森本さんが
トルコ航空でアンマンに到着することになっていたので、
テレビ東京の仕事で来ていたカメラマンの中村さんを送りがてら
空港へ迎えに行った。
しかし、待てど暮らせど二人は降りてこない。
代わりに、噂の美人記者・川村さんが降りてきた。
文春に送り込まれてきたのかと思っていたら、
なんとゴールデンウィークの休暇を使って、自費で見えたのだそうだ。
ううむ、恐るべし文春。
すごい人材を抱えている。
それはともかく、アリさんと森本さんは結局降りてこなかった。
私は午前3時まで待って、ホテルへ戻った。
個人的には、むさくるしい男二人の到着よりも、
ギャルギャルが来てくれた方が嬉しいに決まっている。
が、いったい二人はどうしたのか?
 朝からシャワーを浴びて洗濯を済ますと、
インマルサットとシンクパッドを持ってホテルのプールサイドに出た。
ISDNモデムを使ってインターネットに接続するテストを行う。
 しかし、これがどうやってもうまくゆかない。
コンピュータが電話を掛けているそぶりがない。
困り果てて、いったん撤退した。
ホテルで寝坊していたら、東長崎機関のままラディン村上和巳が現れた。
なんと、その背後から森本さんが部屋に入ってきた。
更に、見知らぬギャルも二人連れている。
森本さんは、ちゃんとトルコ航空で到着していたのだそうだ。
しかし、同行していたアリさんが入国拒否を食らってしまった。
アリさんは日本を出る前に、ちゃんとヨルダン大使に入国できることを
確認していたにもかかわらずだ。
問題はただひとつ、彼がイラクのパスポートを持っているという、
それだけのことだ。
なんとひどい話だろう。
アリさんは今回、開戦前に7年振りで故郷バグダッドへ戻った。
待たせていた恋人と結婚するためだ。
無事に結婚式を済ませて、奥さんと一緒に
再び日本へ向かうことになっていた。
しかし、日本政府は奥さんのビザを出さなかった。
アリさんの奮闘もむなしく、やがて戦争が始まり、
アリさんだけがヨルダンに出て、そのまま通信手段の破壊によって、
夫婦は連絡が取れなくなった。
アリさんは一旦日本へ来て、じりじりしながら先頭の終息を待ちわび、
そしてようやく、奥さんの無事を確かめに帰るところだったのだ。