レイシズム

ラゴスへ戻ってきました。明日は待ちに待った帰国です。10日間の滞在でも果てしなく長く感じたのに、去年ぼくはどうやって半年間もここで過ごしたんだったか、思い出すのも困難です。
昨日は首都アブジャに着いて、アフリホテルという高級ホテルにチェックインしました。チェックインしたのに、泊まれませんでした。ナイジェリア人役員のO氏が空室を確認して、デポジットを支払って、人数分のルームキーを受け取ってから、車の中からぼくたち日本人3人が降りて、部屋へ入ろうとすると、レセプションの女性が私たちを呼び止め、いいました。
「部屋はありません」
キーを回収され、デポジットを払い戻された後、ポーターがぼくたちのトランクをドアの外に運び出してしまいました。つまり、追い出されたのです。
ナイジェリア人役員のO氏が一番怒りました。レセプションの女性に食ってかかりましたが、取り付く島もありませんでした。宿泊拒否の理由は告げられませんでしたが、要するにぼくたちが黄色い肌をしているというのが理由らしかったのです。O氏はいいました。
「たぶん、このホテルで中国人がなにか悪いことをしたね。泊まって、お金を払わずに逃げたとか」
そんなところだろうとは思いますが、ナイジェリア人に「人種差別」を受けたのはこれが初めてではありません。ナイジェリア人はしばしば、自分たちを「アフリカンパワー」の象徴のように誇りますが、それはとりもなおさず、白人に対するコンプレックスの裏返しでもあります。彼らの話す英語は「Sir」だとか、「Let me ...」といった表現が多く、とても礼儀正しい一方で、召使いがご主人さまに話す表現そのものであり、社会の中に強烈な上下関係が形作られていることを物語っています。
彼らが差別の対象とし、バカにしている黄色い人間とはどうやら彼らの認識では中国人らしいのですが、その中国人に自分たちはいったいどんな点で勝ると思っているのか、さっぱり理解できません。ナイジェリアがこの通り世界で一番どうしようもない現状から脱出できない理由は、植民地支配の影響でも政治腐敗でもなく、社会の上層部から最下層まで、大多数の人間の精神に原因があると思います。