夏が来た

サハラから吹き下ろしてくるハマターンという風がナイジェリアにはあるんだ
そうです。これに関して、勘違いしていました。熱風が吹いてくるのかと。
実際には、ハマターンは涼しい風なんだそうで、それが終わった最近、
ナイジェリア全土は夏に突入しました。
夜、天井のファンを最大パワーで回しっぱなしにしても、蒸し暑い空気を
かき回すだけで、汗が止まらず、眠れません。日中も、屋内でじっとして
いるだけでダラダラと汗が流れます。暑いのは何より苦手です。

ナイジェリアの人たちが、ナイジェリアを誇りに思っているようすを見る
度に、いったいこの国のどんなポイントを持って、この人たちは自国を
誇れるのだろうかと、不思議に思っていました。しかし、今日、O氏から
話を聞いて、ナイジェリアの見方が変わりました。
今のナイジェリアは、ナイジェリアの近代以降の歴史の中で、もっとも
すばらしい状態なのだそうです。とりわけ、アバチャ軍事政権の時は
本当に、本当に、酷かったのだと。
ぼくはオバサンジョ前大統領について、ナイジェリアの富を何百億ドル
盗んだか分からない、とんでもない犯罪者かつ売国奴として認識して
いました。
しかし、O氏によると、ナイジェリア人はみな、オバサンジョの不正を
よく知っているが、それでもなお、彼を高く評価し、感謝していると
いいます。
なぜなら、オバサンジョはナイジェリアの状態を劇的に改善したからだと。
今、ぼくはホテルから徒歩3分のF氏の家へ、一人で歩いて通っていますが、
アバチャ時代にはそんなことは不可能でした。外国人だけでなく、
ナイジェリア人のO氏にとってすら、住んでいる日本から一時帰国して
ラゴスを少しでも歩くのは命がけだったそうです。それほど、
ナイジェリアの治安は今より悪く無法地帯だったそうです。
今はたまに電気がありますが、アバチャ時代は今よりもっともっと、
一般市民の手にはなにも残らず、国内の富という富は全て、アバチャたちに
奪われていたのだそうです。
だから、今のナイジェリアは、ナイジェリアの国民にとっては、長い闘いの
末の勝利であって、かけがえのない進歩なのです。
電気も衛生的な水もない、石器時代のような生活をしながら、不満すら
こぼさないナイジェリア人のことをぼくはどうしても理解できません
でしたが、少し分かった気がしました。
「毎年、毎月、すべてが少しづつよくなっている。ただ、そのスピードは、
非常に遅い」と、O氏は語りました。