カフカス人

 カフカスヤ・フォルムのリーダー格アルペールは、アナキストを名乗っていて、カフカスヤ・フォルムの最終目的を北カフカスの大同団結とファッショ・ロシア支配からの解放だとする。つまり、彼らは本物の革命家だということだ。
 彼の語るアブハズ民族の歴史や伝統の話は非常に面白かった。チェチェンが最後までキリスト教を受け入れず、階級社会を作らなかったのに対して、アブハズは初めはキリスト教を、後にイスラムを受け入れ、それでも一貫して、彼らがずっと昔から奉じてきたアニミズムを、今に至るまで捨てていない。
 チェチェンが男女隔離の性格が強く、男同士の信義が大切にされるのに対して、アブハズには男同士の義兄弟の契りだけでなく、若い男女の間の、義兄妹の契りというものがある。アブハズはアブハズ同士でしか結婚を認めない一方で、同じ血族・氏族同士や、同じ村の中での結婚を認めない。
 旧ソ連では離婚が多く、今もそうだが、アブハズにはほとんどそれがない。アブハズでは、初対面の女性に対して、美しさを賞賛するのが礼儀とされる。つまり、アブハジアはギャルギャル社会だということではないか。
 チェチェンはイングーシを言語・伝統上の兄弟民族として持つが、アブハズと言語・伝統上の共通性を持つのはアディゲ民族だ。アブハズとアディゲは古来仲がよかったらしい。私が見たところ、アブハズが端正で繊細な顔立ちをした人が多いのに対して、アディゲは彫りが深く、男性的な顔立ちをした人が多い気がした。典型的なチェチェン人が赤い髪をして、端正な顔立ちをしているのに対して、イングーシがやや男性的な、黒い髪をした人が多いのと同じような差だろうか。
 いずれにせよ、アブハズ、アディゲ、チェチェン、イングーシいずれにしても、白人といえば真っ白な肌をした白人なのだが、欧州の白人とは似ても似つかない。欧州人は彼らに比べると、大雑把な、大げさな、コミカルな顔をしていて、繊細なところがない。カフカス人はあまりにも整っている。