ケマリスト、イスラミスト

 イスラム教徒はもっぱら、「イスラムは正しい」と思っている。しかし、それはおかしな命題だ。なぜなら、私たちの誰一人として、イスラムの親の姿を知らないからだ。だから、「すべての正しいものが、すなわちイスラムである」という命題でなければならない。
 少なくとも、私がいるスルタンアフメット界隈には、まじめなイスラム教徒は滅多にというほどいない。言葉巧みに絨毯屋に連れ込む程度はかわいいもので、今日は大学駅前からアクサライまで歩く道すがら、次から次にポン引きがロシア人やルーマニア人、中国人の娼婦を斡旋しようと声を掛けてきた。しかし、彼らの誘いを断るのは非常に簡単だ。「ハラーム。ハラーム」と、答えると、無言ですぐに立ち去っていった。彼ら自身が、自分たちのスタンスをよく自覚している。むしろ、私がイスラム教徒と知ると、イスラムの話をしたいなどと理由をつけて、抜け抜けと絨毯を売りつけようとする商人の方が悪質かもしれない。彼らはイスラムを売りものにしているわけだから。
 今回こちらに来てほんの数日で、トルコの軍隊がいかに強いかを語るトルコ人に何人も会った。口々に、鉄の規律と団結を誇る。確かに、トルコ民族は軍事的に強いことで歴史的に知られている。ただし、中世までの歴史に限られる。近代以降、トルコは戦争に勝ったためしがない。装備でいって米英の部隊に勝るわけでもないらしく、データ上の優位というわけでもない。彼らがこれほど自国の軍隊を誇るのは、ケマリズムに洗脳されているからじゃないか、という気もして気持ちが悪かった。
 界隈では、日本人の女と連れ立った若いトルコ男をよく見かける。つまり、なむぱされちゃったジャポンギャルズだ。トルコ男は滅多に欧米人の女を連れていることはない。彼ら自身が「白人」にコンプレックスを持ってるし、欧米人はトルコ人差別意識を持っている。ロシア女は金が掛かる。日本人女性が一番簡単に、安上がりに釣れるそうだ。クボっちゃまくんのギャルゲット成功譚などを見ていても、日本女は実に簡単に、トルコ的なおべんちゃらに引っかかってくれることが分かる。Rやその友人のホテル経営者が、自分がいかに日本の女を口説き落として、日本中、世界中に「恋人」を持っているかを、写真を見せながら教えてくれた。