出発

今夜の夜行バスでイスタンブルへ向かう。
しかし、本当はトルコではなくて、ロシアへ向かうべきなのだ。
なぜなら、本当に哀れなのはチェチェンではない。
ロシアだからだ。
ロシアとロシア人は、母なるロシアが蘇る最後の希望を、
自分たちの手で葬ってしまった。
チェチェン人にとっては、大統領が殉教したのはこれが初めてではない。
これまでと同様に、チェチェン人は何も変えず変わらず闘い続けるだろう。
ただし、ひとつだけ違ったことは、これまでの大統領たちと違って、
マスハドフはロシアとの和解を求め続けたことだ。
だから、取り返しのつかないものを失ったのはチェチェンではない。
ロシアの方だ。
ロシアやチェチェンの事情に詳しい大勢の人たちが、マスハドフ
イスラム色が薄く、親欧米路線を目指している、などと語ってきた。
これはまったくのでたらめで、知識人たちの無知を曝け出すものだった。
マスハドフのこれまでの行動や発言は、バサエフやウドゥゴフらに
比べても、もっともクルアーンの教えによく則っている。
マスハドフワッハーブ派バサエフ派と協力したり、
97年にイスラム法を導入したりしたときに、多くの「西側の」識者は
イスラム勢力に妥協を余儀なくされている」などと評した。
これらはでたらめだった。
マスハドフはもっともイスラム的でありながら、チェチェンの指導者の
中でほとんど唯一、ロシアに対して依然手を差し延べていた。

真に深刻な問題を抱えているのは、チェチェンではなく、実はロシアだ。
私が本当に関わろうとしてきたのは、15年も前からチェチェンではなく、
一貫してロシアだった。
しかし、残念なことに、今は私はロシアに入れない。
(まあ、いずれは入ることになるのだが)
イスタンブルでできることを探そうと思う。