裁判に関する説明(その3)

 結果的には、私はロシアの司法をそれまでに比べ見直した。この政治的な事件で裁判官は私を無罪にはできなかったが、捜査官が予想していたのに比べ、はるかに軽い、考えられるもっとも寛大な、ある意味非常識な判決を言い渡した。できる限りの抵抗を示したのだと、私は解釈している。国外退去処分に再入国禁止措置もつけず、罰金1000ルーブリ(およそ3500円)という額は、ロシアの最低賃金の10日分にすぎない。一般にはこういう事件の罰金額は本人の一日あたりの賃金の10倍というのが相当らしい。捜査官たちは少なくとも300ドルと予想していた。つまり、バビツキーのケースと同額だ。しかし、その10分の一だったのだ。16日間も私を拘束し、語学専門官をイングーシまで招聘しての捜査には当然、その何十倍もの予算が使われているはずだ。
 なぜ申し訳ないと思うかというと、私がロシアの法を信頼せず、ロシアの法の中で十分に争わなかったということは、なによりもロシアをよりよい国にしようと努力している人たちへの裏切りだと思うからだ。効果を挙げられる可能性がたとえ低くても、法の場でもできるだけの闘いを闘うべきだったが、私はFSBの脅威から早く離れることを優先してしまった。裁判を長引かせれば彼らに、次なる攻撃の時間的余裕を与えてしまう。いざ、というときに、私は利己に走った。申し訳ありませんでした。