現場主義と文献分析主義

我らが東長崎機関メンバーの田中う〜氏が、果敢にも
北オセチア学校占拠事件の検証に乗り出して、哀れ自沈された。
(参照→ http://tanakanews.com/e0928russia.htm
渡辺千明氏が以前、下斗米伸夫氏の子どもの作文のような記事を
丁寧に論評していたが、どうも私にはそういう根気が欠けている。
(参照→ http://groups.msn.com/ChechenWatch/page66.msnw
ここまで突っ込みどころが多すぎると、やる気を削がれてしまうのだ。
一例だけ挙げると、「シロビキ」という言葉の意味が間違っている。
FSBの内部にシロビキがいるのではない。
政権内のFSBや軍などの出身者をシロビキと呼ぶのだ。

う〜氏の持論は「ジャーナリズムは現場だけではいけない。
多角的な分析が不可欠だ」というものだが、
その対象が専制下ロシアでは通用しなかった。
通用するはずもない。
なんのかんのといったって、世界でも言論の自由が広範に認められている
米国と、KGBによってメディアが一挙統制されたロシアとでは
まるきり事情が違うのだ。
ロシアで、おおっぴらに出回っている情報を集めて
いくら分析したところで、プーチンの狙い通りの結果しか出て来はしない。
チェチェンに関してはう〜氏は4年前にもロシアの公式発表みたいな記事を
発表しているが、この4年、進歩はなかったらしい。
(参照→ http://tanakanews.com/a0117chechen.htm
ちなみに、上の記事ではロシアで使われている「ワッハビズム」という語と
サウジアラビアワッハーブ派が同一でないことを無視しているため、
支離滅裂な内容となっている。

例えばアフガニスタンに関する記事で、う〜氏は96年頃の記事では、
「タジク人を率いるドスタム将軍」などと書いておられ、
指摘を受けたあと訂正されたりした。
(参照→ http://tanakanews.com/d1a01.htm
そういう、ごく初歩的なミスをしなくなったのは、氏がマイクロソフト社を
退社し、自分の足で現場取材する時間を取れるようになった
2000年頃からだ。
しかし、チェチェンカフカスというのは、ただ時間と金があれば
自由に取材できるという場所ではない。
パレスチナアフガニスタンパキスタンイラクなどに現場取材を
重ねたう〜氏だったが、カフカス地域には遂に
足を踏み入れることがなかった。

その結果がこの記事だ。
ジャーナリズムに多角的な分析が不可欠なのは言うまでもない。
しかし、現場の常識がなければ、どんな鋭い分析も無意味だ。