零点記事
チェチェンに隣接するダゲスタンで誘拐されていた
「国境なき医師団」のスタッフの解放にあたって、
オランダ政府が犯人グループに支払った身代金を返せと
被害者の「国境なき医師団」に要求している。
(参照→ http://www.asahi.com/international/update/0530/001.html)
(参照→ http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20040529i113.htm)
これは、今我が国で大流行の「自己責任」に関わる話題とみる方も
いるだろうし、身代金を支払って「テロリストの要求に屈」しちゃった
オランダ政府の姿勢の是非を問いたい方もあるだろう。
どっちを取るか決める前に、こっちをよく見て欲しい。
(参照→ http://www.msf.or.jp/special/arjan.php)
誘拐したテロリストの正体はロシア諜報機関FSB(連邦保安局)
以外のなにものでもない。
FSBはこれまでにも、ロシアのジャーナリスト・アンドレイ・バビツキー氏を
誘拐・拷問の上、チェチェン独立派との人質交換に偽装して
暗殺未遂したり、チェチェン独立派の仕業に見せかけた自作自演の
誘拐・身代金要求事件を繰り返したりしている。
被害者はオランダ政府発行のパスポートを持って、
ロシア政府発行のビザを所持して、つまり、
オランダとロシアの外交関係を前提としてロシア領土に入り、
ロシア国家による犯罪被害に遭った。
だったら、事件の第一の責任はロシア国家に、第二の責任は
ロシアの国家犯罪から国民を保護すべく外交努力をしなかった
オランダ政府にある。
日本の第一仮想敵国は北朝鮮であろうが、かの拉致された被害者に
救出費用を自己負担させるようなものだ。
本来は北朝鮮に補償させる筋合いだということは誰にも分かる道理だろう。
ロシアの国家テロに屈して身代金を支払ってしまったオランダが
その返還要求をすべきなのは被害者に対してではなく
ロシア政府に対してだ。
私はグルジア政府に違法に抑留された経験があるが、
このとき政府は外交ルートを使って、
グルジア政府に要求を突きつけ、巧みに私を帰国させてくれた。
このとき私は政府の車でグルジア首都トビリシから
隣国アゼルバイジャンのバクーまで運んでもらったが、
その運賃を請求されたりはしていない。
朝日と読売の記事は、事件の背後にロシアの諜報機関が蠢いていることを
まったく言及していない。
こんな記事では、読者はこの事件をどう受け止めていいやら
判断できっこない。
よって、この記事零点。