真実の大本営発表(その2)

ちなみに、上の記事のうち、
グルジア北部で武装グループの人質となっていた」
「約5カ月ぶりに解放された」
グルジア北部のパンキシ渓谷で所属不明の武装グループに捕まり」
「同地域からの脱出を禁止された」
「7日の救出作戦が成功した」
「『とにかく家に帰りたい』と語っている」
の部分も私が体験した事実と異なっている。
つまり、記事の全部ということだが…

このとき、共同通信は関係各所にウラを取ったため、
少なくとも嘘は書かなかった。
私を抑留し、「パンキシ渓谷からの脱出を禁止」していたのは
他でもないグルジア政府であった。
「7日の救出作戦」なるものは、パンキシ渓谷で私をかくまい、
グルジア当局やロシアの諜報機関から守ってくれたチェチェン人と、
日本の外務省、在バクー日本大使館の連携によるものだった。

私は毎日新聞に抗議も訂正要求もしていない。
すでに書籍や雑誌の自分の記事で事実を明らかにした。
私も記者なんだからそういう方法で始末をつけるだけだ。
石郷岡編集委員は永久にネット上に恥を晒し続けることだろうか。

毎日新聞が記事に署名をつけるようになったのは素晴らしい決断だと思う。
みなが石郷岡氏と同じではなく、毎日のモスクワ支局には
自立した取材のできる尊敬すべきジャーナリストもいて、
そういう人たちと区別し易いからだ。

自立した、つまり大本営発表から独立して取材し、記事を書ける記者は、
モスクワ発や中東発に関していうと、それでもやはり日本では少数派だ。
ロシアや米軍の無差別攻撃を「作戦」「攻撃」と書き、
チェチェン戦士やイラク人勢力の侵略軍への抵抗を「テロ」と書く。
それが圧倒的多数を占めている。
せめて、例えば「市民を攻撃対象にした場合はテロ」などと、
独自の定義や使用基準でも持っていればいいが、それすらない。
911事件以降、特別に意味がある場合を除いて
「テロ」という言葉を使わないと決めたロイターやBBCとは明らかに
「報道の独立性」に差がある。

もう一度引用する。

「戦争は大本営発表だけが真実ではない」