美味しい思い出

一番美味しいブドウとメロンは、ウズベキスタンサマルカンドで食べた。
一番美味しい洋梨は、グルジアのパンキシ渓谷で食べた。
一番美味しいアイスクリームは、ソ連時代のモスクワで食べた。
長い行列に並んで買った。
一番美味しいミントティは、アブハジアのコドリ渓谷で飲んだ。
自生しているミントを、ルズヴァンと二人で山ほど摘んで、霧の中、
焚き火にやかんを掛けて湧かした。
一番美味しいミルクティは、インドのデリーのパハル・ガンジで飲んだ。
アフガニスタンのハーナバードで、
泊めてくれた民家のおじさんが煎れてくれたミルク入りの緑茶は、
本当に美味しかったなあ。
一番美味しい珈琲は、これは難しい。
ベトナムサイゴンで飲んだベトナム珈琲、
エチオピアのマカレで飲んだモカ・マタリ、
グルジアトビリシで飲んだトルコ珈琲、いずれも劣らぬ香りだった。
一番美味しいバナナケーキは、長崎勤務時代、当時の彼女が焼いてくれた。
一番美味しいラーメンは、博多で食べた。
一番美味しいチャンポンは、長崎の祖父宅で食べた。
海鼠と鯨も長崎で食べたのが一番だった。
一番美味しい鮟鱇は島原で食べた。
ソーメンも島原の焼山で夏に食べたのが美味しかった。
にしんは、京都・宇治川のほとりの店で食べた
にしん茶蕎麦に入っていたのが美味しかったけど、
東長崎・せきざわのにしん塩焼き定食も捨てがたい。
ほっけは大戸屋ので十分美味しい。
一番美味しいレバ刺しは、北九州市の小倉で予備校生時代に
寮長が自分で調理してくれたのを食べた。
北九州にやってきた父がご馳走してくれて、
初めて食べたユッケも美味しかったなあ。
山羊料理はエチオピアで食べたのと、沖縄で食べたのと、
どちらが上だったかなあ。
アブハジアのコドリ渓谷で、自分たちで殺して、ドラム缶で煮た山羊は、
今にして思うと美味しかったのかも知れない。
雨でずぶ濡れになって、震えながら食べたので、
味なんてよく分かっていなかった。