辺見庸さんの講演会

辺見庸さんの講演会に行った。(↓)
http://2.hotspace.jp/~higashi-nagasaki/e2002/E01-2002_23.html

辺見氏が「ネットにはまっている」といいながら、
インターネットの既成メディアとの根本的な違いについて
まったく意識していないらしいことに驚いた。

イランのマフマルバフ監督がブルカに否定的なことを、
「欧米的な考え方にとらわれている」と批判していた。
マフマルバフ監督は欧米のメンタリティなどはじめから持ってはいないし、
イスラムの視点からブルカを論じたのだったが、
辺見氏に限らず、二人の対談をテレビで見た日本の視聴者の限りなくほぼ全員が、
その真意を理解しなかっただろう。

正直に言うと、辺見氏がアフガニスタンを訪れ、米国の軍事行動を非難したとき、
私は不快に思った。
「なぜ今になってやってきたのか?なぜ今まで来てくれなかった?
なぜ声を挙げなかった?」と問いつめたかった。
だから、辺見氏が
「来なければと何度も思いながら、今まで来なかったことを後ろめたく思った」
といったとき、救われたような気がした。

辺見さんの文章はいつも詩のように美しくて、ため息が出そうだ。
編集なしで喋っているのを初めて聞いたが、彼のトークは彼の文章そのままだ。
まるで無駄がなく理路整然としているのに、レトリックに満ちていて美しい。
私には逆立ちしてもあんな優れた文章は書けないし、あんなに上手に喋れない。
だから、辺見さんの何倍も現場で苦労しなければならない。

911以降、日本のメディアは死に体と化し、戦争に協力することに抵抗し、
理性の世界に踏みとどまった言論人はあまりにも稀少になった。
辺見さんは中村哲医師と共に、その絶滅種の一人だ。
ほんの少しだけど、お話しできて嬉しかった。