絶滅種

『「アメリカ」に反論する!』という特集記事を担当したが、
実をいうと私は米国の行動を非難することに、さほどの興味がない。
私は私が魂において所属するイスラム世界が向かっている方向と、
私が物理的・地理的に存在する日本とそこの住民が何をしようとしているか、
ということの方でアタマがいっぱいだからだ。

刷り上がったばかりのPLAYBOY日本版6月号を送っていただいた。
驚愕したことがいくつかあった。
辺見庸さんの文章の中に、スーザン・ソンタグが最近になって遂に、
米国の反テロ作戦を肯定するに至った、と記されていたことだ。
私は全然知らなかった。
そして、辺見さん、チョムスキー氏と共に特集『「アメリカ」に反論する!』
の一翼を担ってくれるはずだった作家ノーマン・メイラー氏が、
やはり米軍のアフガニスタン侵略を
「命を懸けて守る価値のある理想を掲げた」戦争だと位置づけ、
肯定しきったことだ。
彼へのインタヴュー記事は特集枠から外され、別個の記事扱いとなっていた。
メイラー氏は権力と政府に対する批判でこれまで知られてきた。
60年代にはベトナム戦争への反戦デモで、
チョムスキーと共に逮捕されたこともある。
そして、911直後のインタヴューでは、
アメリカは世界でもっとも憎まれる国になる」と発言。
アメリカが押しつけているアメリカ風の生活スタイルや、
巨大な利益をあげ続ける生活スタイルは、
世界の大部分の国には必ずしもふさわしいものではないことを自覚するまでは、
アメリカは苦難に悩まされ続けるだろう」と予言していた。
ソンタグとメイラーまでが、「ブッシュの側」へ移ってゆく。
異教徒の世界で、「人間性の側にいる人間」はいよいよ、
最後の絶滅種になってしまった。

旧約聖書では、罪人の町ソドムに住んでいた義の人ロトに対して、
もしも、10人でも心正しきものがいれば、
ソドムを滅ぼすことはしない、と神は約束された。
しかし、ロトの家族の他、誰一人正しいものはなく、
神はソドムに燃える硫黄を降らせて滅ぼされた。
米国は永らえるのだろうか?