シャムスディン

42歳のシャムスディンは8年間、シャミル・バサエフと共に戦った。
ダゲスタン蜂起にも参加した。
幼い娘が一人いる。今はイングーシェチアのカラブリにいるはずだ。
もう2年、顔を見ていない。消息を知りたがっている。
私にスレプツォーフスカヤの友人を通じて連絡を頼めないかと持ち掛けたが、
友人がモスクワと行き来していると聞くと、向こうの方から断ってきた。
かつてはウラジヴォストークで海軍の空挺部隊にいて、対日哨戒の担当だった。
いつもインジケーターの中で、日本の戦闘機がスクランブルするのを
確認していたのだそうだ。
だから日本の軍隊に有効な軍事機密をいっぱい知っているという。
私のロシアのVISAを見ると、
「今のおれが家に帰るには、自動小銃を持ってゆくしかないよ」
といった。
シャムスディンはよく、魘されている。
殉教した友人たちが夢に出てくるという。
人生の選択に迷ったとき、彼らは夢枕に立って、
進むべき方向を示してくれるから、ありがたいそうだ。
いつか戦争が終わったら、山の中の静かな窪地に小さな家を建てて、
その柱一つ一つに友人たちの名を刻んで、そこに住みたい。