成田くんが撃たれた

一緒に動いていた新人フリー・カメラマン成田慎くん(23)が
私の目の前で撃たれた。
ラマッラで今日、イスラム系13団体のデモがあり、
デモ隊とイスラエル軍の衝突を取材中だった。
成田くんが撃たれた時、私は2メートルほど離れたバリケードの陰にいた。
デモ隊が一斉に石を投げ始め、
それに対してイスラエル軍ジープが二台、
バリケードに突進をかけようとしていた。
イスラエル軍が群集に発砲を始めたので、
私はバリケードの陰に身を隠した。
隣でうめき声がした。
成田くんは足を押さえてうずくまっていた。
同時に2発の催涙ガス弾が私と成田くんの間に撃ち込まれ、
踵を返した私の前にもう一発撃ち込まれた。
白い煙の中、私は目と口を押さえて退避した。
振り返ると、パレスティナ人の若者たちが
成田くんを担いで救急車に運び込んでいた。
「大丈夫か?成田くん、大丈夫か?」
救急車の中から、「大丈夫です」と声が聞こえた。
成田くんはゴム皮膜弾を左足に受け、
肉をえぐり取られたような傷だった。
傷を見て私はてっきり、実弾が使われたのだと思った。
ゴム皮膜弾にも、人の肉をえぐる力があるのだ。
幸い、命に別状はない。
成田くんは大学を出た後、戦場カメラマンに憧れて、
バイトで溜めたお金を持ってパレスティナに来ていた。
ここがデヴュー戦だった。
加藤健二郎さんや菊池修さんのことを尊敬しているそうで、
いろいろと尋ねられた。
昨秋から続いているインティファーダで負傷した日本人ジャーナリストは
亀山亮さんに次いで2人目だ。
亀山さんもラマッラで目を撃たれた。
先日は、一緒にいたスウェーデン人カメラマンが
ラマッラでユダヤ人右翼に刺されて足を負傷した。
ラマッラではここ数日、子供がイスラエル兵に射殺される事件が
あとを絶たないそうだ。