閃光のラマッラ

朝からラマッラへ。
入植地との境にバリケードが築かれ、イスラエル軍ジープが警戒していた。
子供たちが数人、それに向かって石を投げている。
今日は大規模なデモが予定されているはずだ。
デモの群集はここへ合流して、大きな衝突に発展する可能性がある。
デモは盛り上がるとすると夕方だが、昼頃になると若者たちが集まってきた。
子供たちとともに、ジープにかなり接近して、投石を撮影していると、
いきなりジープから兵士が飛び出し、発砲を始めた。
子供たちも私も、頭を低くしながら逃げる。
銃声の直後、初めは右に、次に左に、「シューン」と風が唸る音が聞こえた。
銃弾が側をかすめている。
砲弾の唸る音はアフガニスタンで聞いたが、
自動小銃の銃弾の飛ぶ音は初めてだ。
少し高くなった建物の陰に退避して、再び石を投げはじめた子供たちを撮る。
再び銃声と「シューン」と唸る音。
右脇の壁に着弾する音も聞こえた。
白い煙が見えた。
「ガズ!」
若者が叫ぶ。
催涙ガスだった。
幸い、私たちがいる高台は追い風になっていて
煙はたちまち、ジープの方に流されてゆく。
若者たちは風向きを考えた上で自分たちの場所を決めているのだろう。

若者の一人が撃たれた。
が、自力で歩いていて、腕が赤く腫れただけだ。
これで分かった。
イスラエル兵が使っているのは実弾ではなく、ゴム皮膜弾だ。
恐怖が消えた。

子供たちがジープに近づかなくなったので、
バリケードの脇を通って遠回りし、ジープに接近した。
道路の端っこを通っていったのだが、
そこにも石は飛んでくる。
ジープはパレスティナ側から死角になった後部ドアを開けていて、
そこに数人の兵士たちが見えた。
兵士が私に手招きした。
私も死角に入る。
石がすぐ側に飛んでくる。
ジープのボンネットにも命中する。
兵士たちは口々に私に何かいった。
写真を撮ってもいいというジェスチュアにみえたり、
撮るなといいたそうでもあったり、
よく分からない。
英語は誰も話さない。
ジープが後退するから下がっていろ、というところだけは分かった。
私は立ち木の陰に下がって隠れた。
その立ち木にも石があたり、私の頭の上に枝や葉が降ってきた。