閃光のラマッラ(その2)

ジープが動き出した。
私は体を低くして、後を追った。
ジープが子供たちを追い掛けるように
前の通りに出て停まると、
兵士たちが飛び出してきた。
雄叫びを上げながら自動小銃で子供たちを狙い撃ちする。
私は最接近してシャッターを押すが、
もはや兵士たちの目には私が入っていないかのようだ。
撃ち尽くすとジープに戻って弾倉を代え、また撃つ。
けたたましいサイレンの音が聞こえ、
子供たちの向こうに救急車が現れた。
負傷者が出たのだ。
それでも、兵士たちは射撃を止めなかった。

ジープが後退した後、私は荒れ地を横切って子供たちの元へ戻った。
何人かが私の腕を取ったが、
様子がおかしい。
子供に混じって中年の男がいるのだが、
これが私のことを非難しているのだ。
「この男はジープの中に入っていた。おれたちを写したフィルムを渡したに違いない」
周囲には他にも外人ジャーナリストがいたが、
イスラエル兵はおろか子供たちの側にさえ寄らず、
はるか彼方の安全圏から望遠レンズを構えていたから、
私だけが浮き上がってみえたのだろう。
「今持っているフィルムを渡せ!」

ジャーナリストの中のアラビア語が話せる白人に、私はいった。
「彼らは誤解している。イスラエル兵を撮影するのは当たり前のことだ。
フィルムを渡したなどとんでもないことだ」
このジャーナリストは思いもよらないことをいった。
「分かっている。
が、フィルムを渡さないと彼らの怒りは静まらない。
おとなしく渡した方がいい。
われわれは一緒に取材しているんだ。
君一人の行動で、みんなが迷惑するんだよ」

彼らがすべき取材をしなかったために
私が一人浮き上がってみえたというのに、
この男には恥というものがないのか?
おまけにジャーナリストがジャーナリストに向かって、
フィルムを他人に渡せとは・・・・・

フィルムをもぎ取られた上、腕をつかまれて車に乗せられた。
車の中で盛んに悪態を突く私に、
私を捕らえた男が「ドント・スピーク」と繰り返した。
車は警察へゆくのかと思えば、
ラマッラ中心街の写真店の前に停まった。

男は私のフィルムを現像して、内容を検閲したかったらしいが、
この写真店ではリバーサルフィルムの現像は受け付けていなかった。
ざまあみやがれ。
「なぜスライドフィルムを使っている」
と私を捕らえた男が問う。
とことん、疑いたいらしい。
男は店の主人にフィルムを預けると帰っていった。