もすくわ諸行無常

何事も、以前と同じというわけにはいかないものだ。
特に、モスクワという街に於いては。

クズネツキー・モストの地下鉄駅を出たところに果物売りの露店があって、
私はそこでナツメヤシを1キロずつ買っては
ガリーナの家で食べるというのが日課だった。
が、露店はなくなっていて、その代わり、
売り子の女性は掘っ建て小屋のようなものの中でパンを売っていた。
仕方なく、雪でぬかるむクズネツキー・モスト通りを歩いて
Chevignonというサイバー・カフェへ向かう。
ここには私が日本語入力ソフトを入れたコンピューターがある。

果たして、カフェは閉鎖されていた。
1ルーブリ値上げして、1回5ルーブリとなった地下鉄に乗って、
アホートヌィ・リャートへ移動する。
中央電話局のインターネットを訪ねた。
ここは以前、24時間営業していたが、
今は午前7時から午前2時までになったそうだ。
その代わり、コンピューターは増設されていて、2台から4台になった。
併設された郵便局でハガキを投函。
日本間での切手はこれまでの5ルーブリから、
2倍の10ルーブリに跳ね上がっていた。
これまで日本でハガキを出すより安く、インターネットでメールを書くのと
どちらが経済的かを考えていたところだったのに、
これからはやはりメールだ。
そして、モスクワを訪れた目的であるVISAの更新のため、
アルバーツカヤの旅行代理店「プール」へ向かう。

「プール」は存在しなかった。
移転したそうだ。
守衛の男に移転先を聞いたが、電話番号しか分からなかった。

MGUのNKくんに会って、パティオ・ピッツァで食事した。
彼はこの8月、クズネツキー・モストの賑やかな通りで白昼、
3人組の強盗に襲われたそうだ。
被害は100ドルちょっとで済んだそうだが、
ナイフを首筋に押し付けられたりして、肝を冷やしたそうだ。

NKくんにMGUの偽造学生証を受け取って別れた後、
私は英字新聞の広告欄を見て、
VISA取得のサポートを引き受ける会社を探した。
「プール」を当てにしない方がいいと思ったからだ。