雪のモスクワ

予約の都合とかで、モスクワ行きのアエロフロートビジネスクラスになった。
機内食は確かに立派だった。
陶器の皿に盛られていたし、コース料理よろしく一品一品が
別々に運ばれてくるのだ。
スモークサーモンとエビのザクースカも、牛フィレのステーキも美味しかった。
おまけに量もただならぬほど多かった。
しかし、シートピッチは多分エコノミークラスと変わらぬものらしかったし、
それに、機内は満員で、窓側になった私はトイレに立つのも億劫だった。
徹夜明けで出発したのは、機内で眠って退屈をやり過ごすためだった。
が、なぜかさっぱり眠れなかった。

モスクワは氷点下8度。
一面の雪景色だ。
東京から一気に20度ほどの気温変化ということになる。
それなのに、さっぱり寒さを感じない。
モスクワに来るたび、拍子抜けする。
帽子も手袋も要らない。
セーターも使わずじまいになりそうだ。

半年ぶりのガリーナの家は、何一つ変わっていなかった。
恋人のセリョージャも元気そうだし、黒猫のアーシャも白猫のヤーシャも、
アーシャとヤーシャの小猫たちも変わらず私を迎えてくれた。

早速、モスクワ国立大学(MGU)の日本人留学生NKくんに電話、
明日午後会うことにした。
彼は私にMGUの偽造学生証をくれる。
家には私の他にロシア語を喋るアメリカ人の旅行者が泊まっていた。
彼は夜遊びが好きなのか、朝まで帰って来なかった。