繰り返される歴史

以下に書くことはぼくが取材したことではなく、勉強したことの覚え書きです。
60年代にナイジェリアが独立してまもなく、南東部のイボ民族が中心となってビアフラ共和国(首都エヌグ 1967-70)を宣言。独立を求め戦争になりました。これは100万人とも300万人ともいわれる戦死者、餓死者を出してビアフラ側の無条件降伏で終結します。ぼくが今回行ったり来たりしているエヌグやオニチャといった都市、また現在紛争が続いているポートハーコートなどのニジェールデルタ地域がこの戦争の主戦場でした。
ビアフラが求めたのは、ニジェールデルタ地域の油田地帯から得られる富の分配でした。
そして90年代、ビアフラを戦ったイボ人に代わり、今度はニジェールデルタの少数民族オゴニ人がほう起し、やはり油田地帯となっているニジェールデルタの利益の地元還元を求めて、政府と武力対決しましたが、鎮圧され、指導者は処刑されました。
今は、同じニジェールデルタのイジョー民族が「ニジェールデルタ解放運動」、「ニジェールデルタ人民義勇軍」といったゲリラ組織を名乗って、政府に宣戦布告しています。彼らもまた、油田開発によって汚染され、荒廃したふるさとの補償と、地元への利益還元を求めています。
つまるところ、60年代のビアフラ戦争の時から、この国では同じ問題を巡って延々と血を流し続けています。そして、何度戦争を繰り返しても、たとえ政府が軍政から民政に移行しても、なにも改善されません。
21世紀になって、ぼくが初めてこの国を訪れて見たのは、水道も電気もガスも道路もない、石器時代みたいな未開の土地と果てしないスラム、そして路上に死体が転がる無法地帯でした。
ナイジェリアの石油産出量は世界11位。クウェートイラクアラブ首長国連邦に匹敵します。でも、間違いなく、40年前に石油なんて見つからなかった方がこの国の圧倒的多数にとって、もっと幸せな現在があったでしょう。