Gの脅威

ベニン市のジャングルの民家に泊めていただいている。
夜中に巨大なゴキブリの小隊に襲撃されて、死ぬかと思った。カブトムシぐらいの大きさで、妙にアグレッシブなのだ。日本のゴキブリは人を見ると逃げるが、こちらのは向かってくる。確かゴキブリ類は助走をつけないと飛べないと聞いていたのに、彼らは狭い室内を縦横無尽に飛び回って、ぼくの足だとか、背中だとかに次から次に張り付くのだ。枕を振り回して抵抗を試みたが、なにしろ多勢に無勢。何があっても動じないことでは定評のあるぼくも思わず、「きゃー」と、鳴いた。
ゴキブリといえば、どんなものでも食べて生き延びられることでは自信を持っていたぼくが、昨日初めて、「まずすぎて食べられない」という体験をした。江頭2:50みたいな感じの痩せて骨ばった鳥の骨付き肉が入ったシチューとライスだったのだが、罰ゲームみたいにたっぷりチリが入っていて、喉にむせるわ、涙と鼻水が一緒に出るわ。油が一センチほど上に浮いていて、アゲそうだわ。かなり粘ったのだが、結局Give upしてしまった。敗北感でいっぱいだ。
ナイジェリアは、食事がまずいことでは英国、チェチェンに次ぐレベルで、旧ソ連中央アジア諸国並だ。しかし、稀に旨いものもある。昨日のまずい昼食のあと、夕食が運ばれてきて、ぼくは恐る恐る口に運んでみたのだが、衝撃的に美味しかった。牛モツ、レバーの入った魚のスープだったが、いい感じに出汁が出ていて、天然イノシン酸が絶妙であった。ナイジェリア人は極端に味覚センスが貧しいのだと思っていたが、今日のは偶然だろうか?それとも、普段のワンパターンで極端な味付けの方が意図された苦行かなにかか?
一つだけ、これからナイジェリアを訪れる全人類に警告しておきたいことがある。彼らにスパゲティだとか、インスタントラーメンを渡してはならない。ナイジェリア人の食べるものはすべてゲル状だ。彼らは貴重な麺類をスープと溶け合ってドロドロのゲルになるまで煮込むことを止めないだろう。私はいつもここでは半液状化したラーメンを泣きながら、でも残さずにいただいている。
アバカリキは何事もない、平和な町だが、ここエド州ベニンに出張したお陰で、一晩にゴキブリの襲撃と、旨いのとまずいの、両極端の食事も体験することができた。イードのお恵みをアッラーに感謝するばかりである。