本当は嘘です

豪邸みたいなでっかい駐在事務所に住んでいると、以前説明したかと思いますが、正確ではありません。本当は、遠くから観ると豪邸なんだけど、近くによって至近距離から観ると、幽霊屋敷です。
ぼくの部屋は二つ、窓がありますが、そのうち一つは網戸のサッシのサイズを間違えたらしく、ガラス窓の内側に網戸が外れたまま、立て掛けてあります。まあ、それなら、サイズの合うサッシを買ってきて取り替えればいいといわれそうですが、実はガラス窓と網戸を固定した上から、セキュリティ用の鉄格子がはめ込んであります。壁ごと破壊しなければ網戸は外せません。
バスルームには英国製の陶器の便器が設置されていますが、便器そのものは英国製でも、設置したのはナイジェリア人だとはっきり分かるようになっています。水を流すと、派手に中の水がそこいら中に弾け飛ぶようにできています。
ドアは厚い木製で、鍵が2つずつついています。が、この鍵の一個は小学生が釘で打ち付けたみたいな感じで、見事に歪んでいます。二階のフロアと階段を繋ぐ鉄製のドアの鍵は、シリンダーごとすっぽり抜け落ちていました。抜け落ちていたというのは不正確で、最初から固定されていなかったのです。だから、ここは鍵なしです。

ナイジェリアは戦争なくて平和、ともいったような気がします。それも嘘です。油田地帯のニジェールデルタ流域ではゲリラの活動が活発で、パイプラインが至るところで爆破され、それによって世界有数の産油国ナイジェリアの原油生産能力は、本来の3分の一に落ち込んでいます。これが現在の世界の原油価格の異常な高騰の一因となっているそうです。
アバカリキのあるエボンイ州はニジェールデルタではありませんが、それほど遠くはありません。デルタ流域との出入りの際は、主要道に多数の検問が設置されています。これは、ゲリラの摘発を目的としたもので、そのためぼくら外国人はフリーパスだったりするのですが、先日はトランクを開けられたし、ボディチェックされたこともありました。
パイプライン爆破の際に、作業員が吹き飛ばされて、だいたい年間600人ぐらい死亡しているそうです。この数から考えると、パレスチナ程度には紛争地といっていいのかも知れません。