踊り屋と翻訳屋

国内にいると、ロシアSVR(対外情報局)の為に働く公安調査庁や、ロシアFSBの為に働く
公安警察が鬱陶しいので、ある自由の国へ疎開してきた。
ここでは、携帯から日本へ国際電話をかけても3.6円/分と、私の日本国内の携帯通話料
の11分の1だし、同じ携帯で月々2000円で高速インターネットが使い放題になる。
もちろん、基本料金はない。今も、その携帯インターネットでこれを書いている。
リトビネンコ事件に関しては、出国直前にも某ワイドショーが電話してきて、「生前、本人が
某氏をゆする計画をロシアギャルに漏らしていた」などという話を振ってくる。
ワイドショーに、「踊らされないで」とお願いする方が無理なのか?
実際のところ、リトビネンコ暗殺計画はロシアにとって、首尾通りとはいかなかった、と
いうことだろう。でなければ、プーチン自ら「協力する」といっておいて、ルゴヴォイを病院に
隠す必要もない。たぶん、原因物質がポロニウム210であることは見破られまいと、
甘く見ていたのだろう。FSBはいつもこんな感じだ。ある一点で「こんなことをやってのける
とは!」と、周囲をあっと驚かせておいて、同時にどこかの一点で、「こんなドシロート然の
ミスをやらかすとは!」と、正反対の驚きを与えてくれる。
佐藤優氏らロシアFSBに近い人たちが主張しているように、今回の事件がFSBでも非主流
のはみ出しものの仕業なら、最高検査検は彼をかばったり、隠したりする必要もないはず
だ。次はまた、都合の悪い誰かが消されるのだろう。今度は自殺、ということになるかな。
いくつかの新聞が、ロシアのメディアからの伝聞として、リトビネンコ氏の父親ヴォルテル氏
の証言を伝えている。なぜ、直接インタヴューしないのだろう?私は東京から彼に電話で
話を聞いたが、ヴォルテル氏は息子同様、とても気さくな人物で、突然電話した
私なんかの無礼な質問にも、誠意を尽くして答えてくれた。
以前、いくつかの新聞からロシアの事情に関して質問を受けたとき、リトビネンコ氏自身を
紹介すると申し向けたが、彼らは乗ってこなかった。使えない記者だなあと思っていたが、
今回も似たような調子だ。国際報道とは海外の新聞を翻訳することで、自分で取材する
ものではないという、おかしな常識がまかり通っている。