スパイごっこ

くそいまいましいことに、トビリシグルジア秘密警察と
追いかけっこをしている。
こちとらとしてはロシア秘密警察とならば少々の危険があっても渡り合おうと
思うが、グルジア秘密警察は取材対象でもなんでもない。
さっさとやりすごしたいだけだ。
6日にサルピの国境から入国した際、入国審査に私だけずいぶん待たされるので、
おかしいな、と思った。
係官は隣の同僚に耳打ちし、どこかへ連絡を入れさせた後、私に
「車の運転はできるか?」と尋ねた。
これはつまり、グルジア国内で私の居場所を補足するために、
レンタカー会社に手配すべきかどうかという話なのだ。
入国二日目に、滞在場所近辺を私服が張り込んでいることを知った。
お世話になっている方に迷惑をかけることになっては大変だ。
私は自分から警察に電話し、日時を決めて落ち合った。
それが一昨日のこと。
その時点で、こちらはグルジアに対して一切敵対する意志がないこと、
アブハジアオセチアの問題ではなく、今のテーマがチェチェン戦争であることを
グルジア内務省下士官の私服に伝えた。
ところが今朝になって、トビリシを離れる直前になってから、
私はグルジア国家保安省と表札のかかったビルに連行された。
およそ2時間の尋問の後、「パンキシに行ってはならない」と、言い渡された。
この国の今の法律では、私の国内移動を規制する権限はないはずだと思う。
秘密警察のいう「いってはならない」が、どういう法的根拠に基づくものやら、
ただの脅しやらわからないが、こうなるとすぐに出発というわけにも
ゆかなくなり、あちらこちらに相談に駆け回っている。
たまーに日本の「ジャーナリスト」や「人権活動家」たちのウェブサイトを
見ると、どうせどこにもいきゃしないのに、ロンドンがどうした、
イラクがどうしたと、知りもしないことをでまかせに「論評」している。
こういう無能な連中でさえも、私の代わりにチェチェンを取材してくれるなら、
こちらはどんな協力でもしてやろうと思う。
何しろ彼らなら私と違って、現地当局にマークされるような仕事は
していないから、フリーパスで重要地点に入れるし、
どんなお宝も持ち帰り放題なのだ。
しかしなんとも残念なことに、彼らの無能はこちらのキャパを
大きく上回っていて、最低限仕事といえるような仕事をすることはありえない。
所詮、彼らは別の職業の人たちだ。