経過

患部が化膿しているようだ。そういえば、処置に使った部屋は手術室でも無菌室でもなく、外からカーテン越しに丸見えの診察室だったし、医師は消毒薬を塗りつけただけですぐに処置を始めていた。そもそも一人の看護士もつけず、黒いかばんひとつ分の器具だけがあって、えらく簡単だなあ、と思わせた。施術後はパナドールという、バファリンを強力にしたような鎮痛解熱剤を処方しただけで、傷口を洗う消毒薬も、替えの包帯さえも渡されなかった。こちらから尋ねたが、ジャンブラートは「要らない」と翻訳した。「プロだから」と、話している。しかし、トルコの医療レベルがそれほどひどいとは知らなかった。

長崎放送時代、あまりにひどい日本の医療現場の実態を取材した私は、日本の医者だってまったく信用しない。大権威といわれる大学教授の医者がある分野(このケースではHIV)で高校生にもかなわない知識水準であったりする。やつらの無知と無能のせいで、年間どれほどの本来死ななくていい患者が死んでいっていることだろう。テヘランのドクトル・ズィアイーはその点、自分の運命を任せるのに何の不安もなかった。
トルコの医療が劣ることは分かっているつもりだった。近視矯正手術に比べると、割礼ははるかに簡単で、高度な技術を必要としないから、トルコでも十分と踏んだのだ。しかし、ここまで遅れているとは思わなかった。