無知の知の告知について
田中う〜さんのサウジアラビア滞在記を読んで頭を抱える。
(参照→ http://tanakanews.com/f0407saudi.htm)
ほとんどすべての段落に間違いがある。
「女性が身体を覆い隠すことはクルアーンで求められている」
などとまったくの嘘が書かれている。
聖典クルアーンでは、女性の服装に関しては、「胸部を覆え」とあるが、
「身体を覆い隠せ」などとは一切書かれていない。
「髪の毛を隠すのはイスラム教に基づく義務」とも書いているが、
クルアーンにはそのようなことも一言も書かれていない。
髪の毛を隠すのは顔を隠すのと同様、イスラム法学者たちのたちの主張する
イスラム法上の学説のひとつであり、顔を隠すべきという説は
髪の毛を隠すべきという説に比べて一般的でなく、普及せず、
支持されていない、というだけのことだ。
他にも、「サウジ人のナショナリズム」だとか、「国家」と「民族」を
ごっちゃにして、「伝統」という語と取り違えたとしか思えない、
意味不明な表現が出てくる。
どうやら欧米のリベラル主義を批判したいらしいのだが、う〜さん自身が
欧米リベラル派と同じくらい思い込みで事実を歪めてみてしまっているので、
これでは事情を知っている人や現地人にとっては苦笑するしかない。
う〜さんのメルマガは16万部も発行されているそうだ。
つまり、月刊現代やPLAYBOY日本版あたりよりも多くの人に読まれている。
それに、月刊現代やPLAYBOYと違って、飛ばし読みではなく、
しっかり読まれているだろう。
そういう記事に、堂々とイスラムに関して間違った事実が流布されることは
偏見を広めることになる。
う〜さんは米国事情や中国には詳しいが、イスラム世界や旧ソ連に関しては
基礎的な知識が欠落しているので、記事にも間違いが含まれがちなのだが、
読者はう〜さんが何についてよく知っていて、何についてよく知らないかを
よく知らないわけだから、米国事情について感心したそのままの崇拝度をもって、
間違った記事も真に受けてしまうことになる。
一人の執筆者が世の中の何もかもを知っていることなど、もとより
ありえないことだし、知らないことについて間違うのは当たり前のことだ。
しかし、少なくとも、それぞれの執筆者が何について知っていて、
何を知らないか、自ら予め断っておくことは必要な気がする。