貧相な翼

エリフは28日に帰ってくるから、私は土産を置いて、彼女に会わずにアンマンに向かおう。あとで戻ってくるのだから、余分な荷物は残しておこう。
 成田からモスクワへのアエロフロートは機体が大きいのにシートが変色して、布がほつれていたりして、なんだか不安な気持ちになった。読書灯も壊れているということは、他のもっと重要な電気系統も同じような頻度で壊れているのかなあ。食事はとてもまずくて、しかも量が少なかった。
 続いてモスクワからイスタンブルへ向かう小さな飛行機に乗り込んで、離陸を待ちながら眠り込んでいると、まだ目的地に着いていない筈なのに、客が降り始めた。「機材故障で飛行機を交換する」ということだった。空中で機材故障に気づいて、飛行機の代りに乗客を交換されなくてよかった。私たちは日付変わって未明まで待たされるらしい。でも、飯は出ないらしい。なぜなら、アエロフロートだからだ。
 遅れるのは、ひょっとするとまずい。サラマッドに逢えなくなったりしたらどうしよう?でも、その場合エリフには逢えるだろう。どうなったところで、アエロフロートが何とかしてくれるということはありえない。アンマン行きに乗せてくれてもいいのに。要求するだけしてみようかな?どさくさに紛れて、振り替えてくれるかもしれないぞ。なぜなら、これはなんでもありのアエロフロートだから。
 それでも、眠っている間に、事故もなくイスタンブルに着いてしまった。