Caucasoid

ある意味偏見に満ちた話をする。

海外で、欧米人と付き合う機会は、学生時代のバックパッカー旅行の頃から
多かったが、出会うのは「なんでも知ってる雑学王的物知りの白人」と、
「学校で習うはずのことすら何にも知らないおバカ白人」に、
くっきりと分かれていたように思う。
そして、「何にも知らない」のはまず間違いなく、米国か、オージーか、
ニュージー、つまり、欧州大陸人以外の白人なのだ。
彼らの話す内容といったらおそろしくシンプルで、ネイティヴだってのに、
クレイジーとか、ベリグーとか、オーケー、シット、
ファッキンしか使わない。
語彙が貧弱な割りに、むやみに崩した口語表現を使うから、
聞き取りに無意味に苦労する。
逆にこちらが使う英単語を、例えば彼ら自身を指すCaucasoid
コーカソイド(白人種)という単語を知らなかったのにびっくりした。

イラク戦争が始まる前、私はブッシュの48時間期限の最後通告まで、
開戦はあり得ないと固く固く信じていた。
なぜ信じていたかというと、私は自分の経験に基づく
「米国人は無知で無教養でシンプルでイナカものでおバカ」
という思い込みは自分の偏狭な偏見に根ざすものであり、
実際には米国人も聡明で常識的なのに違いないと、
謙虚に自省的に考えていたからだ。
聡明で常識的であれば、この戦争がうまくゆかないことは
分かりきっている。
実際に戦争が始まってしまって、私は混乱した。
私が考えていたのを二度ひっくり返すほどに
米国人というのはアタマがよくって、この状況下で戦争をうまく
やってしまうのかとも考えてみた。
そうではなく、一番初めに私が自分の偏見に過ぎないと思っていたことが
正しかった。
ブッシュとその周辺の人々は、私や欧州人やアジア人の多くが
思いも寄らないほど、知能が低く無教養なイナカものだったのだった。
あの、“世界に冠たる”米国のトップがこれほどのばか者である
ということが、事実が小説よりも奇なる地上最大の悪い冗談だった。

私は自分が現実の米国を見たこともないくせに、
思い込みから親米的でありすぎたために、米国を見る目が曇り、
判断を誤ったことを深く反省している。