2日の追い剥ぎ(その2)

強盗団はランダムに通り掛った車を襲うのではなく、事前に狙いを定める。
イラク領に入ってしばらくのところに給油所があり、
自前のガソリンタンクなどを積んでいない車両はそこで給油する必要が
出てくるのだが、ここで一般人に混じって、強盗団の一味が
通る車両を品定めしている。
そして、高級車が来ると、給油所から追いかけていって、
あるいはもっと先で待ち伏せて、幅寄せするなどして
狙った車両を停止させ、銃を突きつけて金品を脅し取る。
狙われるのはもっぱら、チャーターの高級車だ。
イラクとヨルダンを結んでいる交通関係、セキュリティ関係の会社の
ほとんどは、イラクの元ムハバラート(秘密警察)を
雇い入れているのだそうだ。
だから、下手な会社を通すと、情報が向こう側に筒抜けになって、
かえって待ち伏せされる危険があるという。
この邦人はアンマンのシェラトンホテルでGMCの4WDをハイヤーしたそうだ。
アンマンのシェラトンホテルが手配するのはイラクナンバーでも
イラク人ドライバーでもなく、ヨルダンナンバーの
ヨルダン人ドライバーで、それだけでも強盗に狙われる理由になる。
シェラトン手配のハイヤーは以前も襲われたことがあって、実は会社ごと
強盗団と繋がっているのではないかいう疑いの声もあった。
タレント氏はしばしば戦争や政治について書いたり話したりする方
だそうで、戦争中のバグダッド週刊ポストのU氏が
イラク当局に拘束された体験を記事に書いたとき、
「命からがらとは笑わせる」と書いていたそうだ。
もっとも、プロのU氏と違って、タレント氏はあくまでタレントさん
であって、時代劇俳優に真剣を持たせてホンモノの剣術家と
斬り合いをさせるのが無茶なようにここで防犯知識の初歩の初歩
だからといって、それくらい知ってて常識だろ、とはいえまい。
今回は俳優が剣術家の真似をして、ケガをしちゃった、という話だ。

防弾車や護衛を手配できるなら別だが、生半可な知識でハンパに
間違った防犯行動をとるよりは、
強盗が狙いそうな目立つ車を使わない方が大事だ。
私は移動はすべてローカルバスなどを使い、
チャーター車は決して使わないようにしている。
ちなみに、旧「人間の盾」の面々は今なお頻繁にイラクに出入りしている。
彼らは防犯対策の専門家でもなんでもないが、戦前、戦中、戦後を通して、
一人として被害に遭ったものはない。