遠い悲劇(その1)

祭りは未明まで続いていた。空が白んでも、太鼓を打ち鳴らす音、
男たちの野太い掛け声が聞こえていた。
そして、午前10時半頃、フロントを通って往来へ出ようとすると、
ホテルのスタッフに止められた。
「危ない」
彼が指したテレビの画面には、阿鼻叫喚図が映し出されていた。
カルバラで爆弾事件があり、10人が死亡、100人が負傷。
同時刻にバグダッドでも爆弾事件で5人死亡、15人負傷。
すぐに屋上に上がり、テレビ東京K氏に電話。
続いて、週刊朝日N氏に電話。
カルバラへ行くべきか、バグダッドへ行くべきかと迷う。
というより、すぐにカルバラへ移動したくて体が落ち着かない。
こういうとき、メディアに派遣された立場なら、なにをさておいても
現場に走るだろう。

事件発生時の長崎放送の沸き立った報道部フロアを思い出した。
あの頃は、楽しかった。
やはり自分にはメディアの現場記者の方が合っているのかな、
という考えが頭によぎる。
正午前、N氏から電話。

昼寝をして、午後2時、再び屋上へ上がって、N氏の電話を受ける。
話がまとまった。