バグダッド概観(その2)

停電は相変わらず多いが、以前と違って、どこの建物や施設でも、
自前の発電設備を使うようになり、
街中にいて停電を体験しても、ものの5分で発電機が回り出し、
電気は回復する。
イスタンブルなんて、世界に数箇所しかない一千万都市でありながら、
昼の日中に当たり前のように何時間も停電して、
その間市民は蝋燭を灯しているのとは大きな違いだ。
私がイラクを離れていたのはわずか8ヶ月間だったが、
その間に首都中心部のほとんどの建物が、以前とは外見が変わっている。
建て増ししたものもあるし、内装を変えたものもある。
完全に立て替えたものも。
もともとイラクは豊かな地域大国だったが、みるみる間に、
さらに豊かになってゆくようすが分かる。
経済活動はどこまで肥大してゆくことだろう。

サダム政権が積極的に外国メディアを含む取材を受け入れたのに対して、
米軍当局は私たちの取材を一切受け付けない。
パレスチナホテル周辺や、CPA本部のある旧サダム宮殿周辺など、
市内のあちこちにはものものしいコンクリート防護壁が築かれ、
「No Photo!」と書いてある。
戦争中のサダム政権の方が写真撮影に対する制限は緩やかだった。
自由なんて、少なくとも報道活動の面からはこの国にもたらされていない。
外国人記者は街中からほとんど姿を消したが、時折、
パレスチナホテルの防護壁の脇に、頭の弱そうな顔をした
白人メディア関係者が――紛争地取材のノウハウを全く持っていない
のだろう――鎧のような防弾チョッキをつけて立っているのを見掛ける。
ラフな普段着のバグダッド市民の中でただ一人、SF映画の中からでも
飛び出してきたようなコスチュームで、かわいそうなほど周囲から
浮いている。
同じような白人はパレスチナでも見掛けたなあ。
あの時は彼らはご丁寧にも、私にヘルメットと防弾チョッキを
購入するように勧めてくれた。

シリア製の清涼飲料水ローヴァーズ・ピーチ・ソーダは2.25?gで
1000ディナール
同じくシリア製のペプシそっくりウガリット・コーラも1000ディナール
2〜2.5?`はありそうなバスケット入りのナツメヤシは5000ディナール
バグダッド市内のレストランでクズィ(ピラフの上に羊の煮込み肉が
のったご馳走)を食べると3500ディナール程度。
羊の臓物と頭の煮込みパチャは専門店でしか食べられないが、
これが2000ディナール程度。(1ドル≒1400ディナール