笑えない話

 私はまだ、前川さんのことを好きになってはいない。ぜんたい会ったこと
もないのだから。ただ、メディアのどこかで見てきた彼女の容姿を知ってい
るだけで、私の中では彼女はまだ、ブラウン管とスクリーンの中の遠いまぼ
ろしだ。中学生の頃ですら、タレントのファンにもなったことがなかった。
ましてや、会ったこともない人を好きになるのは、純情な中学生ならぬ私に
は難しい。
 しかし、彼女のあのおそろしいほどの知性と鋭い感性は魅力だ。心底学び
たい、少しでもいいから盗み取りたいと、打算的に思う。
 前川さんは「私は浮気性だ」とおっしゃる。「常岡さんがいないときは淋
しさを紛らわすために色んな男の子と遊ぶと思う」と。これを聞いて、深入
りするな、と私の中で理性の声がする。いつも、それで苦しむじゃないか。
 自分が苦しむのを避けようと、あなたをいつでも自分の心から切り離せる
ように、心の準備をしてしまうかもしれない。そうすると、あなたを切って
も切れない家族のようには愛せないかもしれない。そうするとそれは、あな
たの本意ではないかも。

 ところで、この場で私は、こんな恥ずかしい内容を大真面目な文体で、今
後書き綴ってゆかなければならないのかしらん。ここでは客観的であった方
がいいのだから、お笑いにしておいた方がよくはないかなあ。かといって、
今後、笑うに笑えない結果になってしまうことも、今の私は予感しているの
だ。
 まあ、当分の間は試行錯誤だな。前川さんの日記を読んで、しっかり勉強
させてもらおう。このウェブサイトは「情報公開」の実験の場だ。どこまで
公開できるのか、公開すべきなのか、限界に挑戦してみよう。