座談会・報告会(その2)

これまでの「平和運動」とは「平和を」と口でいうことであった。
具体的な戦争阻止や平和維持活動は、あくまで国家指導者の手に委ねられていたから、
市民レベルでは投票行動によって平和実現に期待できる指導者を選ぶことだけが、
実力の行使方法だった。
今回のジャミーラ団は、プリミティヴな形ではあれ、
それを逸脱した初めてのケースだった。
特定の国家の軍事行動を実力で左右しようとした意味では、
民間で組織された非武装の軍事組織だったのだ。
それは、現代の戦争がもはや物量ではないことを前提としている。
戦争は軍隊と兵士が兵器を使って行うものであり、女性や子ども、
武器を持たない一般市民はそれになすすべもない、という常識は今回覆された。

私たちは今回、とにかく夥しい失敗をやらかした。
日本側の暴走で虚偽の「緊急声明」なるものがメディアに流れ、
あわやジャミーラさんの政治生命(?)が風前の灯火となった他、
自己責任という考え方がしっかりしていない参加者の行動が問題になったりもした。
現地での連絡がうまくゆかなかったり、
私自身サダム政府を騙し損ねて肝心なときに国外退去を食らった。
そしてなによりも、最大の目的であった「開戦阻止」を実現できなかった。
今日の報告会で、失敗点への総括がなかったことが残念だ。
自画自賛ではサダムと変わらない。

ホントいうと、「人間の盾」そのものには私は全然関心がない。
みんなが大騒ぎするから行きがかり上説明してあげましたよ。
イラクにだって思い入れがあるわけでもない。
こんな安全で楽で簡単な取材は私でなくったってできるだろう。
実際、これから猫も杓子もイラク入りすることだろうし。
私は一日も早く、チェチェンの取材に復帰しなくちゃならないんだから。