ジェッダ

アル・タイヤル社の車両は午前零時近くにジェッダの高級ホテル
ホテル・アル・バドル・ジェッダに到着した。
中二階の一角に机椅子が据えられていて、
そこがアル・タイヤル社の臨時オフィスなのだった。
私とイマーム夫妻、エジプト人夫妻は、
その前のソファで休むよう薦められた。
そのままソファで寝入って、シャリフ氏に起こされたのは多分、
夜明けも間もない時刻だっただろう。
「今夜は君の席を取れなかった。部屋を用意したので休んで欲しい」
案内された部屋は15階の豪華なダブルルームで、
ジェッダを一望にできる大きな窓があった。
部屋のテレビはCNNもBBCも、アルジャジーラも映った。
BBCを見ている間に眠ってしまった。

8時台には起きていたのに、無理して昼前まで眠った。
起きるとアル・タイヤル社を覗いたが、まだ誰の姿も見えない。
ホテルの国際電話ブースへ行って、加藤健二郎総裁に電話を一方入れる。
電話の直後、ホテル内にインターネットブースがあることを知り、
数時間使った。
午後も遅い時刻になって、三々五々アル・タイヤル社のスタッフが現れた。
午前1時半にダマスクス行きの便があるという。
再び部屋に戻ってBBCを観たり、
インターネットでメールを送ったりしていたが、
その便が取れたという連絡は、いつまでたってもない。
午後10時、タラキ氏に呼ばれた。
すぐに荷物をまとめろという。
空港へ。
チェック・イン・カウンターはさまざまな民族の客でごった返していた。
ようやく、私には事情が分かった。
誰も、予約で席を確保したりはしていない。
いきなり空港へ来て、ただ「乗りたい」という。
それで、ボーディングパスが渡されてしまう。
はらはらしながら順番を待っていたら、私にもパスが渡された。
機内持ち込み手荷物のチェックさえなかった。
一つ一つチェックしていたら、多過ぎる客をさばききれないのだろう。
午前1時半を少し過ぎて、シリア航空の小さな機体は
サウジアラビアを脱出した。