ダマスクス

午前3時半、シリア航空でダマスクスに着く。
サウジアラビアとまったく違う気候の国だということに、
空港のタラップを降りながら気づいた。
寒いのだ。
こんな時間に街に出ても仕方がないので、
空港のベンチでバックパックを枕に寝入った。
しかし、ものの一時間で、体がかじかんで目が覚めた。
日が昇るのを待ってから、あらためてバスで街に出る。
ダマスクスは10年振り3回目だ。
やがて、10年前とまったく変わっていないことに気がついた。
今にも崩れ落ちそうにおんぼろの、
ザハラート・アル・サバーハ(花の朝)・ホテルは
とっくに取り壊されているに違いないと思っていたのに、
殉教者広場に面してそのままの姿で建っていた。
その二件隣には、安くて汚いがうまいホルモン焼きを食べさせるカバブ屋が、10年前と同じようにボール紙で炭火をおこしながら客に囲まれていた。
バナナとミルクのミックスジュースを飲ませるスタンドもそのままだった。
旧市街アーケードをウマイヤド・モスクの方に歩きながら、
自分がいかにこの街が好きだったかを思い出した。
アルジェリアアフガニスタンだけでなく、
この街が自分にイスラムへの関心を持たせてくれたのだった。