私はチェチェン人が嫌いだ

ルズヴァンが怒鳴る。
「おまえは2年前に改宗したばかりだ。
 おまえにイスラムの何が分かる。
 おれは生まれて20年以上モスレムとして生きてきたんだ。」

「ふん。
 もしもおまえが日本に生まれていれば、改宗することも、
 ジハードに赴くこともなかっただろう。
 おまえは周りに影響されているだけだ。
 ウルスマルタンワッハーブ派に支配されたから、
 ワッハーブ派になっただけだ。
 自分の頭で考えたことなんて何一つないじゃないか」

「なんだと!
 事実おまえはスーラもろくに読めないじゃないか。
 コーランを知らずにイスラムを知ってるといえるのか」

「おまえだって、アラビア語を話せないんだから、
 スーラを知っているといったって、それはおまえにとってただの音だ。
 アラビア語を学ぶか、ロシア語のコーランを学ぶかしなければ同じことだ」

「おれは事実闘ってきた。
 おまえはただ写真を撮って、原稿を書いて、それで金儲けをしてるだけだ。
 金のために働くやつがジハードだなんておこがましい。
 おまえはイスラムを金儲けにしている、汚いやつだ!」

ルズヴァンも私も、つかみかからんばかりの勢いで、
悔しさで真っ赤になりながら怒鳴り合った。
周りではビスランとハムザートが、
「いや、ルズヴァンは他の仲間よりイスラムをよく学んでいた。
 よく理解しているというのは事実だ」
とか、
「シャミルは銃を撃たなかったが、同じ命の危機に身を曝していた。
 金のために働いていたとは思えない」
などと、
それぞれを弁護して、熱しすぎる私たちをなだめていた。
そうしているうちに、夕暮れの礼拝の時間となり、
私たちは皆で並んで祈りを捧げるのだった。

ある日は私たちが、翌日は別の二人が、同じように言い争い、
残りの誰かがなだめる役目を受け持った。
ある日は激しく、またある日は穏やかに、毎晩論じ合っていた。
お互いがどんなことを考えていて、どんな点が弱みで、
どれぐらい愚かなのかをよく知っていた。

やつらのことを思い出すだけでいまいましいが、
それはやつらがいくつもの点で嫌なところがいっぱいあるのに、
いくつかの点で尊敬せざるを得ないからだ。

ああ、これを書いているだけでいやな気持ちになってきた。
むかつく!