ただ一人のジャーナリスト

天才写真家村田信一さんのパレスチナの写真が、
今日発売の講談社フライデーに掲載されている。
パレスチナ自治警察と、イスラム組織「イスラム聖戦」の銃撃戦を
飛びかう銃弾の中で撮った力作だ。
この凄惨な場面がアラファト最後の日々を象徴し、
パレスチナがニセモノでないジハードの舞台になるのなら、
私も再び現地へ行こうと思った。

モスク・東京ジャーミィの集団礼拝で、その村田さんと会った。
村田さんは、礼拝に来ていた在日パキスタン人ジャーナリスト・
ムハンマド・ズベルさんを紹介してくださった。
ズベルさんは2歳の長男ウサマくんを連れてきていた。
礼拝の後、新宿へ移動して、サムラートというインド料理店で
昼食を四人ご一緒した。

ズベルさんは、今回の米軍によるアフガニスタン侵攻で、
恐らくただ一人、タリバン側から伝え続けた。
あれほど連日アフガニスタン報道一色で、
タリバンの非人道的な政策などを喚き立てていた日本のメディアは、
その実、この間彼以外誰一人としてタリバンを見もしなかったのだ。

見ていない、事実を確認していないものを批判するのは
報道の立場として明確におかしいのではないかと思うのだが、
今回のアフガニスタンではタリバンとビン・ラーディン氏を、
一昨年はチェチェンイスラム勢力を、
やはり大手メディアの誰一人として取材しないまま、
現地の「強い方の」政府の発表を垂れ流し、ときには誇張さえして、
プロパガンダ、あるいはデマゴーグの役割を果たし続けた。

99年にタリバンを取材した私は、実はタリバンに関する
ズベルさんの主張には賛成できない。
私はズベルさんと違って、タリバンの政策を微塵も肯定できない。
しかし、タリバンを取材しなかった、あるいは能力及ばず取材できなかった、
日本のどんなジャーナリストよりも、
ズベルさんの方がタリバンの実情を良く理解していることを認めるし、
実際に伝えたリポートの中身も勝っていると感じる。

いつものことだが、最低限、水準に達した仕事をするジャーナリストは
あまりにも少数で、ちゃんちゃらおかしい問題外の連中の声だけが大きい。